②-1.音頭とSwingの違い
私達日本人はジャズ演奏の上で最も大切な「swing」というリズム感覚をつかむ事がとても苦手です。「swing」というリズムは、英語に代表される外国語特有の言葉のリズム感覚に由来するものだからです。
ジャズのリズム「swing」をインターネットで検索すると、
4分音符を「タタタ・タタタ・タタタ・タタタ」と3連符で感じるリズムの事で
ジャズ演奏においてはドラムの音を聴きながら
「チー・チッキ・チー・チッキ」とリズムを感じましょう
そして裏拍にアクセントを入れてメロディー弾きましょう
という風に説明されていたりします

しかしこれでは、いつまで経ってもジャズらしいリズムの演奏にはなりません
日本人がこの「チー・チッキ・チー・チッキ」というリズム感覚でswingのリズムを捉えても違和感を感じないのは、日本にもこの3連符で感じる伝統的なリズムがあるからです。
それは「トン・トン・トン・」「トトンが・トン」といういわゆる音頭リズムです

この音頭のリズムに合わせてswingのリズムを感じているので「チー・チッキ・チー・チッキ」「トトンが・トン」という表拍起点のリズムになってしまいます。これがいわゆる縦ノリ、と呼ばれる日本人独特のリズム感です。
外国人は、裏拍のアップビートを起点とし

「ki ・chi-・chi ki・ chi-・chi」という風にリズムをとります。
カラダがゆらゆらと横に揺れるため、横ノリ、と言われたりします。
step1では
日本人は表拍を起点にダウンビートでリズムをとり
外国人は裏拍を起点にアップビートでリズムをとっている
カラダの動かす方向が真逆であり、起点が半拍ズレたリズムの感じ方をしている、というお話をしました
日本人がジャズを難しく感じてしまう、外国人のような演奏にならない、という根本的な理由がここにあります。
実は日本人のほとんどのジャズ学習者は「日本人らしいダウンビートの音頭リズムで演奏するジャズ」を演奏しています。しかし日本にいて日本語を話している限りこの事になかなか気がつく事が出来ません。
日本語をベースにリズムを捉えようとしている限り、何かが本物とは違うような気がする、という違和感から抜け出す事が出来ないのです。
「ジャズは裏拍にアクセントを入れて弾きます」という教え方をする方もいますが、日本語のfeelで英語のfeelを説明しようとする典型的な間違いです。
正しくは、「外国人と同じ発音やリズム、身体感覚で演奏しましょう」という事なのです。
こちらの動画を観てください。英語のスピーチに後付けで音楽を追加したものです。言葉がすでにSwingのリズムを持っているのがわかりますよね。ジャズで用いられるswingというリズムが、彼らが日常的に使う英語の会話の延長である事がよくわかります。欧米人は、言葉のリズムと同じリズムを楽器で鳴らしているだけ、という感覚なのです。
こちらの動画もものすごく面白いので是非!スターバックスの店員さんへの不満をぶちまけているアメリカ人の黒人さん。その動画にBGMでビートを追加したらHip Hopになってしまった!というものです。言語感覚の延長線上に音楽文化が形成されているんですね。
逆に言えば、盆踊りや和太鼓といった日本独自の芸能を学習する時に、私たちは基礎となるリズム感覚と身体感覚をすでに持っています。日本のお祭りで流れてくるメロディーやリズムはどこかで聞いた事がある、歌詞、楽器や踊りも何となく知ってる、というその感覚です。
日本人が直感的に外国人のfeelを掴めないのと同じように、外国人も意識的にトレーニングをしなければ日本人と同じfeelで日本の音楽を演奏をする事は出来ません。
こちらの2つの演奏を聴き比べてみましょう
演歌歌手の氷川きよしさんのズンドコ節をアメリカ人の楽団が演奏したものと、本家の比較です。
●Pink Martini楽団/「Zundoko-Bushi」
●氷川きよし/氷川きよしのズンドコ節
「氷川きよしのズンドコ節」はダウンビートで表拍でバチっと決まるリズム感、言葉の発音やカラダの動き、全てが日本人のfeelと完全にマッチしています。
一方でPink Martini楽団の演奏はメンバー全員のカラダの動きがアップビート。音楽のノリや、歌手のカラダの動きが本家とは全く異なっている事が視覚的にも分かると思います。
カッコいい演奏なのですが、これが日本の音楽です!と紹介されてしまうと、いや、ちょっと違う、、と言いたくなりますよね。
これと同じ事が、日本人が演奏する外国の音楽についてもおきています。
日本人の演奏する多くの音楽は、ポップス、ジャズ、ロック、クラシック、サンバ、ボサノバといったジャンルに関わらず、基本的に全てこの日本的な表拍のダウンビートを起点として演奏されています。
これはどちらの方が優れている、という優劣の問題ではなく、ベースとなっている感覚的な違いがある、という客観的な事実です。それらしい演奏を目指すのであれば、まずはこの違いとなっているベースの部分を揃える事が一番の近道でしょう。
ジャズのための学習の段階としては、まずは音源を聴きながら、「チーチッキ チーチッキ」という音頭のリズムではなく、「Ki Chi-ti Ki Chi- ti」という風に、裏拍から始まっているSwingのリズムに聴こえるようになるまで徹底的に繰り返し聴きましょう。8ビートなら「チキチキ チキチキ」ではなくて「Ki chi ki ti Ki chi ki ti」という感じです。
その時、リズムの表拍に合わせて頭がブンブンと下がるのではなく、裏拍に合わせて頭がクイクイと上がる状態を目指してください。
それが出来るようになってから、次のステップに進むようにしましょう。
