②-2.Swingのリズムを歌で感じよう
ここでは分かり易く、歌を歌うことで、この外国人的な「swing」と日本人的な「音頭」のリズム感覚、カラダの使い方の違いを学んでいきましょう
皆さんは「幸せなら手をたたこう」という曲を知っていますか?
この曲は日本では1964年に坂本九さんが歌ってヒットした楽曲で、
原曲はアメリカ民謡で「if you are happy and you know it」
というタイトルで親しまれています
この曲は実はジャズと同じswingというリズムで演奏されています。
日本語と英語のリズム感覚で、それぞれこの曲を歌ってみましょう
●坂本九:幸せなら手を叩こう
●If You’re Happy and You Know It
言葉の持つ日本語のダウンビート、英語のアップビートに意識を注意して聴くと、だんだんと違うリズムに聞こえてきませんか?
0.5倍速にすると、よりその違いがハッキリわかると思います。
私が感じてる日本語の音頭、外国人的なSwingのfeelにすごく近いものをメトロノームで作れたので、こちらを聴いてください。それぞれを比較して交互にメトロノームのパターンを鳴らしています
実際のベースが鳴る表拍は、図の🔵の辺りポイントで、3連符の裏拍を起点として、一定のポイントではなく揺れ動いている、というイメージです

このメトロノームのガイドは、日本人の思うswing(音頭)と外国人の感じているswingというリズムの違いを視覚的に認識してもらうためのもので、細かなニュアンスは英語の歌を歌い、手拍子をする事で掴めるようになります
日本語の音頭リズム「タッタ、タッタ」に対して
英語のswingは「カ フカッ、カ フカッ」と覚えると良いでしょう
このリズムのズレは何故起こるのでしょう?
それは日本語と英語の言葉の発音とリズム感覚の違いに由来します
日本語の場合、言葉のひとつひとつが必ず母音と結びつき、独立した1つの音節として発音されます。(モーラ拍リズム)
英語の場合、言葉の流れの中で強く長く発声される部分が規則的に現れることで、一定のリズムを生み出します。(ストレス拍リズム)
モーラ拍リズムの日本語で「ド」と発音した時と、ストレス拍リズムの英語で「(n)Do」と発音した際、言葉の出るタイミングに若干のラグがあるのを感じてください
言語学の詳細な解説は専門家に委ねますが、言葉にはそれぞれがもつ特有のリズム感覚が存在し、息の吐き方、カラダの使い方全てに影響しています。ですので、私達日本人はこの英語のリズム感覚、言葉の発音を直感的に理解することができません。
そのため、つい私たちは日本人的なモーラ拍のリズム感覚のまま英語を発音してしまいます
イフユァ ハッピー エンジュー ノゥイット クラップユァ ハンズ
マクドナルド
これがいわゆるジャパニーズイングリッシュ、という日本人特有の英語の発音とリズム感覚の正体です
私達日本人は、日本語という表拍から始まる構造を持つ言語を普段話しています。
そのため、演奏中も、常に表拍を探してそこに拍を合わせようとする、という事を無意識に行っています。


これに対し、外国人は常にリズムの裏拍を探し、そこを起点に表拍の位置を決めています。外国語の歌はほとんどのメロディーが裏拍から始まっていますよね。


ではこの言葉のリズム感覚の違いによってジャズ演奏においてどんな問題が起こるか、という事ですが
日本人的なリズム感覚でswingを演奏しようとすると、
リズムのグルーヴ、フレーズのニュアンスを適切に表現出来ず、リズムが少し前につんのめってしまう。
外国人的なリズムがテンポが遅れている、ズレているように聴こえる
という現象が起こります
また、ストレスリズム言語である英語の場合はアクセントさえ規則的に現れればよく、音節の長さはある程度自由に伸び縮みさせることができます。音楽演奏の中でこの言葉が自然に伸び縮みする感覚を「レイドバック」と言います。日本語の歌にはこのレイドバックの感覚はありません。

繰り返し何度も言いますが、このリズム感覚の違いは、言語感覚に由来するものです。
私達日本人は、日本語のリズムで歌を歌ってカラダを動かす、というトレーニングを幼少期から知らず知らずのうちに行なっています。ですので、この日本語的な音頭のリズムとカラダの使い方が完璧に身についてしまっています。
それを外国人的なswingのリズム感覚に変えていかなくてはいけません。
その為に必要なトレーニングは、一度幼稚園児に戻って、手を叩きながら英語の歌を聴こえてきたまま歌う、ということです
英語の歌の感覚を通じて、裏拍を起点に表拍の場所を見つける。日本語のリズム感覚との違いを感じる、という練習が日本人には必要です。
まずはジャズのフレーズやメロディーを音符を読んで楽器で弾く前に、この裏拍起点の欧米人的な言語感覚・リズム感覚・身体感覚に歌を通じて徹底的に慣れる必要があります。
具体的なトレーニングとしては、
歌詞をインターネットで検索せず、聞こえてきたまま英語の歌を歌う。
(このトレーニングが難しいと感じる方は、英語のような日本語「コンニィチワ」で歌の練習をすると良いでしょう)
4分音符の裏拍で手を叩きながら歌を歌う
ということです
これは外国人のようなリズム感でジャズ演奏をするための、基本となるとても大切なトレーニングです。

