ジャズってどんな音楽?(歴史紹介)
私が最近ジャズピアノのレッスンをしている中で、実はちゃんとしたジャズを聴いたことが無い、という生徒さんに出会うようになりました。
何故ジャズを習ってみたいと思ったんですか?と聞くと、YouTubeなどの動画配信サービスで、馴染みのあるpopソングのジャズアレンジ動画を観てカッコいいと思ったから、と言う方が多いのです。
アメリカで誕生した音楽、という事を知らない方も多いので、超ザックリとジャズという音楽の歴史をご説明したいと思います。
◼️アメリカ史(超ザックリ!!)
1492年 コロンブス アメリカ大陸発見
→植民地時代
労働力として、アフリカ大陸から大量の奴隷がアメリカ大陸へ
1776年 独立宣言
1862年 奴隷解放宣言
【ジャズは1890年代にニューオリンズなどのアメリカ南部で誕生した音楽!】
1619年にオランダの軍船が20人の黒人奴隷を連れてきたのが”奴隷貿易”の始まりと言われています。黒人奴隷は主にアメリカ南部でプランテーションと呼ばれる綿花の農場などで働かされていました。(そのころはフランス領でした)
アメリカ南部はヨーロッパとの貿易港として発展し、農場主たちはヨーロッパ人で、ヨーロッパ文化をたしなんでいました。 そこでは白人はヨーロッパの音楽(今のクラシック音楽)などを演奏していました。
1865年 南北戦争で北軍が勝利すると、南軍の軍楽隊の楽器が出回り、黒人にも入手できるようになりました。 その払い下げの楽器で黒人たちがパレードでの演奏を始めました。
黒人たちは1890年代になると、夜間は自由な時間を与えられるようになり、音の出るものを楽器代わりにして黒人特有のフィーリングを持った音楽を演奏するようになりました。(Bluesミュージック)
南部の都市ニューオリンズは貿易港として栄え、大繁華街になり売春宿が多く、1階には酒場がありました。そこで「ラグタイム」と呼ばれる白人音楽に黒人的なリズムを取り入れた独自の音楽が生まれます。
ではまずはジャズの原型となったと言われている「ラグタイム」という音楽を聴いてみましょう。
▼「ラグタイム」
●Scot Joplin “The Entertainer”
このラグタイムを聴きながら、ウン パッ ウン パッ という風に2拍4拍目に手拍子をしながらリズムを取ってみましょう。このアクセントの取り方は、元々は黒人的な体幹を中心としたダンスのリズムの取り方から発生しています。
ヨーロッパのバレエなどの踊りは、基本は拍の頭でリズムを刻みます。
ところが黒人的なダンスは体幹を軸に体を揺らす事で、2拍目4拍目に過重のポイントがズレます。これを「ラグ」と呼びました。この黒人的な2拍4拍を強調するビートを取り入れて生まれたのが「ラグタイム」というピアノで演奏するスタイルの音楽です。
この「ラグ」のビートにのせて複数のミュージシャンが即興で一斉に演奏するスタイルの音楽がジャズと呼ばれるようになりました。最初はJAZZではなく”JASS”といって、性行為のスラングでした。(語源については諸説あります)
こちらは伝説的なジャズトランペッター、ルイ・アームストロングが出演した1917年当時のニューオリンズを舞台にした”New Orleans” という1947年の映画の抜粋です。ビリー・ホリデイ、ウディ・ハーマン等の現役のジャズミュージシャンが多数参加しており、白人カルチャーの中でジャズがどのように人気を博していったかを知る事が出来る資料としてオススメです。
●Where the Blues were born in New Orleans by Louis Armstrong
その後、ニューオリンズに売春宿の禁止令が出たため、仕事を求めたジャズミュージシャンはミシシッピ川を北上し、シカゴやニューヨークなどの都市部へとジャズが広がって行きました。
1910年ごろから流行した初期のジャズは、このウン パッ ウン パッ という2拍4拍目を強調したリズムを強く感じる事が出来ます。まずはこの時代の音源を聴いて黒人的なリズムをしっかりと感じられるようになりましょう。
▼1910年代ニューオリンズジャズ
●King Oliver’s Creole Jazz Band:- “Sweet Lovin’ Man” (1923)
●PEE WEE HUNT “Somebody Stole My Gal”
(吉本興業のオープニングで使われているあの曲も、実はこの時代のジャズ名曲です)
●Louis Armstrong – When The Saints Go Marching In
▼1920~40 スウィングジャズ
1920~40年代、アメリカでは当時の流行歌を演奏する歌謡ショー興業バンドとして、各地にオーケストラサウンド中心のビッグバンドが結成されました。グレン・ミラー楽団、カウント・ベイシー楽団、ベニー・グッドマン楽団、デューク・エリントン楽団 などなど
●Glenn Miller and His Orchestra: “Jingle Bells” 1941
●One O’Clock Jump w/ Count Basie & His Orchestra (1943)
●I’ll Remember April / Johnny Bothwell and his Orchestra
この頃には何百人もの人が踊れる巨大なダンスホールが都市部には存在し、ジャズは今で言うクラブミュージックのような、ダンスミュージックとして人気でした。ジャズをバックに男女がペアになって踊るSwing Danceもこの頃誕生しました。
●Stormy Weather in color – The Nicholas Brothers and Cab Calloway
●Hellzapoppin’ in full color
●Swing Jazz Playlist
◼️モダンジャズの勃興
▼ビバップ
1939~1945の第二次世界大戦中にジャズは”Be-Bop(ビバップ)”と言う新たなムーブメントを迎えます。それまでダンスミュージックとして人気だったスウィングジャズは、オーケストラ中心、ミディアムテンポで3分程度の尺で終わるものが多かったのに比べ、ビバップ期のジャズはスモール編成でテンポも速く、1曲の分数も長くなり、プレイヤー間の力比べといった要素を含んだ刺激的な音楽へと変わっていきました。ダンスを楽しみたい聴衆の為の音楽から、各楽器のプレイヤーがアドリブソロの内容を競い合うスポーツのような音楽へと変わっていったのです。
ビバップはダンスホールでの仕事を終えたジャズミュージシャン達が深夜に集まり、アフターセッションを繰り返す事で発展して行ったと言われています。個人の演奏によりフォーカスし、ミュージシャンそれぞれが順番にコード進行に沿ったアドリブソロを披露する、というスタイルが定着していきました。
これまでにない音楽のスタイルを求めるミュージシャン達の創意によってビバップのスタイルは形づくられ、聴衆にも新たなスタイルのジャズ(モダンジャズ)として受け入れられていきました。
●Charlie Parker – Now’s The Time
●SWING TO BOP (1941) by Charlie Christian
ビバップの黎明期を支えたミュージシャンとして、チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー、バド・パウエル、セロニアス・モンク、マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーン、レッド・ガーランド、ウィントン・ケリー、ブルー・ミッチェル、チャーリー・クリスチャン、ビル・エヴァンス、マックス・ローチ、オスカー・ピーターソン、レイ・ブラウン などなど、などなど、、名前を挙げだしたらキリが無いほど優れたジャズミュージシャンがたくさんいます。
以下のBebopスタイルの演奏をまとめたプレイリストがありますので、スウィング以前のジャズと聴き比べてみてください。
●Straigjt-Ahead (Bebop/Hardbop) Jazz Playlist
今みなさんが日本のジャズライブハウスで聴く演奏の多くがこのビバップ、もしくはビバップから発展したスタイル(=コード進行を基にアドリブソロを聴衆へ披露する形)の演奏だと思います。
このビバップというジャズの演奏スタイルは音楽理論的に非常に説明がしやすく、ポップス音楽理論を提唱していたボストンバークリー音楽大学による「バークリーメソッド」として世界中へ拡散し、多くのフォロワーを生み出す事になりました。
◼️ジャズは常に現在進行形で発展してきた音楽
コード進行に合わせてプレイヤーが自由にアドリブを披露し合う、BeBopはジャズの革命的な出来事でしたが、一つのスタイルが定着すると、それを打ち破りたいというプレイヤー達によって、時代と共に新しいスタイルのジャズがどんどんと生み出されました。
→ラグタイム
→ニューオリンズジャズ
→スウィング
→ビバップ
→クール・ジャズ
→ハード・バップ
→モード・ジャズ
→フリー・ジャズ
→フュージョン、ロックとのクロスオーバーなどなど、、
一言で「ジャズ」と言っても、実は演奏されてきた時代やミュージシャンの数だけ演奏スタイルが違うのです。これからジャズを学習しようと思っている皆さんは、どの時代のどのジャズを学習したいのか、色々な音源をたくさん聴いてイメージを持っておかなければなりません。
日本では多くのジャズ初心者の方は、理論的に説明がしやすく、学習として取り組みやすいBeBop期のジャズを教材としている方が多いと思います。音階やコード、ハーモニー、フレーズなどを覚えて、それを実際の曲に当てはめていく、という形です。
しかしこの学習方法で注意をしなければいけない事は、feel (= 発音やリズム、身体感覚)という、ジャズらしく聴こえる為の最も大切な要素をおろそかにしてしまいがちである、という事です。
ジャズfeelを正確に掴めていない状態では、コピー譜や、スタンダードジャズ曲集、ジャズフレーズ集といった市販の譜面をいくら弾いても、ジャズらしく聴こえるようにはなりません。逆にfeelをきちんと掴んでいる人は、拙いテクニックだったとしてもジャズらしく聴こえる演奏をすることが出来ます。
